無料壁紙 『人間不在の歴史觀』
〔当HP:目次〕


《全集第五巻所載『人間不在の歴史觀』》

吉野櫻雲:發表文

《福田恆存は先の大戰(或いは「戰争」)をどのやうに捉へたか》(括弧内は吉野注)
 *「大東亞戰爭は日本近代化の成果であり、同時に破綻であつて、それを前近代的な
ものと考へてゐる限り、近代の確立も克服もあつたものではない」「肯定と否定とは両立
させ得るもの」(『人間不在の歴史觀』全五P381〜2)
*「私はこの戰争(大東亜戦争)を明治開國以來、近代日本が辿らねばならなかつた一
つの運命とみてゐた」。「あれ(日露戰爭)以来、吾々は同じ事をやつてゐるのではない
か、ここに血を流した父祖の絶望的な惨めさは、そのまま今(太平洋戦争中)の吾々の
ものではないかと」。そしてその「同じ事」、絶望的な慘めさとは、「當時のヨーロッパ列強
(先進國)に對し背伸びして力を競はうとする明治の日本の苦しい立場を物語るもの」
(P385『軍の独走について』)

〔恆存は戰爭を以下の樣に捉へる〕
*戰爭=國家的エゴイズム=エゴイズム(國・個人)=惡=「聖戰」視は欺瞞。
「が、背に腹は變へられぬ時がある」(P385)=やむを得ぬ「必要惡」としての肯定。
 そして、「戰爭」と共に「近代化」も恆存は「必要惡(ネセサリーイーブル)」
と他の評論にて書いてゐる。
以上から推察するに、このやうに纏める事が出來る。
大東亞戰爭は(日露戰爭をも含めて)日本が辿らざるをえなかつた、必要惡としての「近
代化(西歐化)」が招いた一つの経路(「運命」)であり、その結果として「軍は日本近代化
の防波堤」となり物質的近代化の「成果」に寄與した。ゆゑに「大東亞戰爭は日本近代
化の成果である」と。
そして「破綻」の方の原因は、日本は物質的近代化(西歐化)だけで終はりもう一つの更
に重要な「精神の近代化」を缺如した「適應異常」に因るものである、と。何故なら恆存
は「日本の近代史を『近代化に對する適應異常の歴史』として見直す事を提案する」
(『適應異常について』)、と言つてゐるのであるから。(『讀む會テキスト:甲図と乙図』の
違ひ。參照)
故に何處かに書いてあつたが「先の大戰は良いも悪いもない、失敗であつた」と言ふ事
になるのである。
以下の林房雄著『大東亞戰爭肯定論』と一見似てゐるが、植民地化(「東漸する西力」)
への抵抗(戰ひ)と、近代化(必要惡)の爲の戰爭と、同じやむを得ぬ戰ひでありながら、
概念的相違がそこにあるやうに小生には思へる。

恆存の「歴史觀」及び「大東亞戰争」見解
*「もともと私は大東亞戰争否定論の否定者。(中略)或は林(房雄)氏も私と
同じで、單なる否定論の否定を肯定論と銘打つただけかも知れません」(『人間
不在の歴史觀』)
*戰爭=國家的エゴイズム=エゴイズム(國・個人)=惡=「聖戰」視は欺瞞。
「が、背に腹は變へられぬ時がある」(P385)=やむを得ぬ「必要惡」としての肯定。
言ひ換へれば、日露戰爭も大東亞戰爭も「すべてを自分の問題として、自分がその中に
這入つて、歴史を生きながら押進めて行くといふ態度を持たねばならない」と言ふ事なの
である。(『軍の獨走について』P389)
  「自分がその中に這入つて」とは、氏の以下の文と繋がつていく。
  「歴史家が時代や人物と共に生き、共に迷ふ心の持主でなければならぬのは、言ふ
までもなく歴史上の人物が、歴史そのものが、迷ひながら生きてゐるからです」『人間不
在の歴史觀』全五P381)
  「歴史に附合へば附合ふ程、首尾一貫した因果の直線は曖昧薄弱になり、遂には崩
壊し去る。そして吾々の目の前に残されたのは點の連續であり、その間を結び附ける線
を設定する事が困難になる。(中略)が、歴史家はこの殆ど無意味な點の羅列にまで迫
らなければならぬ。その時、時間はずしりと音を立てて流れ、運命の重みが吾々に感じ
られるであらう」(『乃木将軍と旅順攻略戦』P116)
  上述の事柄を恆存の体驗的現象に顯はすとこのやうになる。
「その時私は感じたのです。あたかも明治以後の日本の歴史が眼前を、といふよりは自
分の身内を、一瞬のうちに通り過ぎるのを。そして、私はつくづく思ひ知りました、あれ以
来、吾々は同じ事をやつてゐるのではないか、ここに血を流した父祖の絶望的な惨めさ
は、そのまま今(太平洋戦争中)の吾々のものではないかと」(P385『軍の独走につい
て』)

即ちそれらは「近代日本が辿らねばならなかつた一つの運命」の糸で繋がつてゐるのだ
と。 たしか「 歴史の必然」とも恆存は他の評論で述べてゐる。

参考:別評論家の「大東亞戰争」見解
*小林秀雄:(要約)「反省したい奴は反省したらいい、俺はしない・・・。歴史的必然であ
る」的捉へ方。
*林房雄:「大東亞戰爭は東漸する西力に對する東亞百年戰争の終曲」(『大東亞戰爭
肯定論』)
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〔以下は「ヤフー掲示板」「小生ブログ」上に於ける吉野見解〕

中國は「覇権主義國家」なり!
中國をどのやうな概念で捉へるかで、「歴史カード」への對處は自ずと決まつてくる。即
ち「覇権主義國家」と捉へるか、それとも「日中友好条約」の辭儀通り「友好」的かつ善隣
的な國家として捉へるかで對し方が決まつてくるのである。
此處で事の本質を讀み違ひ、中國が繰り出す戰術的カード(「靖國參拜取り止め」)を受
け入れるなら、國の命運を左右し將來に悔恨を残す事になる。(小泉首相の參拜が國を
傾ける云々の、森元首相の發言とは全く反對の意味で)
中國が「覇権主義國家」であるのは今更詳しい檢證を要する必要のない明々白々たる
事實なのである。その戰術的「歴史カード」を「友好的外交」向上の爲のカードと讀み違
へる政治家は、余程の馬鹿かそれとも経済上の利權がらみ(選挙得票も然り)等の私利
私欲から、故意に己が眼を曇らせてゐるに相違ない。
 「理屈と膏藥は何處にでも引つ附く」の喩へあり。中國が持ち掛ける「難癖」カードはそ
れが國際ルールに悖ると否とに拘はらず、役に立つと相場が決まれば、幾らでも屁理屈
を上乗せして繰り出される、北朝鮮も含めた野蛮國特有の變幻自在の「ジョーカー」の類
でしかない。中國の野蛮國性は「囚人臓器賣買」で金を稼ぐ唯物史觀國家特有の体質
に露見してゐるのである。
 日本の政治家に中國を「覇権主義國家」と捉へる頭があるならば、「靖國參拜問題」は
「内政不干渉」の一言、外堀で食ひ止め、一歩たりともそれ以上門内に入れなければ良
いのである。政府内に見解が不統一かつ及び腰であるのを見て、高嗤ひしてゐる中國
共産党員の聲がこの國の政治家には耳に入らないのであらうか。
 今、「内政不干渉」との謂ひで、小泉首相の「大手門」がきつちりと閉まつてゐるにも拘
はらず、敵に塩を賣るかの如く身内から「外堀」に橋を掛け渡す國賊的輩(中國の提燈
持ち)がゐる。それはまるで「大阪夏・冬の陣」で徳川に無理難題を吹つ掛けられ、「外
堀→内堀」と大阪城を丸裸にされ、ついには本丸を乘つ獲られてしまつた豊臣家の末路
を想起させる。無様な同一的姿を今日晒しつつある日本の現状が垣間見えるのである。
もし此處で一歩を譲り外堀を埋めれば次にどんな内堀攻略の「無理難題」が控へてゐる
か充分に察しがつくであらうに。「A級戰犯→B級→C級」→「海底ガス田開發」→「沖ノ鳥
島」→「尖閣諸島」etcと。
 我が國は「A級戦犯合祀」に到つた日本の「論理的必然」を主張し、後は「内政不干
渉」の論を貫けばよいのである。
「政・経」價値觀の主客転倒した政治家は自己保身に目も眩み、「日中友好条約」の「友
好」のお面の裏にある「覇権主義國家」中國の臭い芝居が見抜けないから、「賣國」的言
質を弄して厚顔無恥でゐられるのである。叉は、過去に取つた自己の言行に辻褄を合
はせるべき必要上、「恥の上塗り」をしながら鐵面皮に自己欺瞞の國士気取りをしてゐ
るに過ぎない。そもそも今囘のケチの附け始めである「中曽根の靖國参拝取り止め」、
「河野洋平の從軍慰安婦肯定發言」がそのいい例である。評論家「潮匡人」も同質な事
を言つている「(過去の)失政の責任者(中曽根元首相)が現内閣を批判し『分祀』を説く
姿は滑稽きはまる」と。(參照:三島由紀夫は生前、中曽根を嫌つてゐた。それは中曽根
の愛國心のご都合主義、相對主義、欺瞞的な側面を見拔いてゐたからであらうか)
 中曽根康弘も河野洋平も中川秀直も、そして「元首相」達も、よく考へてみるがいい。
先の大戰で亡くなつた英霊は、行く前からA級・B・C級を選んで死んだのではない。事後
法でしかも勝戰國のエゴイズムで裁かれたのである。
彼等は、「死んだら靖國に祀られる」と言はれ勇んで死地に赴き、死ねば死人に口なし
が故に、今度は生者の都合から死後分祀されてしまふ。その樣な「ナショナルアイデンテ
ィティー」を喪失した、あやふやな國家の爲に果たして人は戰爭で死ねるであらうか。既
に戰ふ前からそのやうな國の勝敗は決してゐる。
日本國政治家の主張する「靖國參拜取り止め」は、結果として日本國民に「精神的荒
廢」以外の何物をももたらしはしないのである。物欲の爲に英霊を賣つた「精神の荒廢」
が行き着く先は・・・。
森元首相の今囘の言は、経済の爲に政治を中國に賣れと言つてゐる賣國的發言に等し
い。商(経済)によつて包囲された将に兵糧攻めの日本城(政治)が目の當たりに見え
る。

 と言ふ事で、ここは一番、やはり福田恆存の卓越した評論を顧みるべきではなからう
か。詳細は以下をご参照下されば幸ひであります。
http://blogs.yahoo.co.jp/sakuhinron/folder/69991.html
  http://www.geocities.jp/sakuhinron/page036.html
 《乃木将軍と旅順攻略戦》
  http://www.geocities.jp/sakuhinron/page030.html
をはり



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